第127回定期演奏会 指揮者&ソリスト インタビュー

2026年4月5日(日)に行われる第127回定期演奏会の指揮を務める湯川 紘惠と、ドヴォルザーク チェロ協奏曲のソロを務める長谷川 彰子に鎌響来演の印象、楽曲への思いなどをうかがいました。

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(聞き手:当団コンサートマスター 五味 俊哉)

鎌響合宿中 夕食後にインタビュー

【アマチュア屈指の大オーケストラの熱量】

五味:湯川先生には2022年のファミリーコンサートで初めて指揮台に立っていただいて以降、何度も来演のご相談を差し上げていましたが、なかなかお忙しく、今回鎌響としては念願かなって定期演奏会の指揮をお願いできることになりました。4年経っていますが、初めて来演のとき、今回とで鎌響の印象は変わりましたか?

湯川:初めて共演させて頂いた時から変わらず、鎌響はみなさん明るくてとても仲良しという印象です。みなさんすごくエネルギッシュでいらっしゃるし鎌響の仲間と音楽を演奏することが大好きなのだと伝わってきます。

五味:長谷川先生は今回鎌響には初めての来演ですが、どんな印象をお持ちですか?

長谷川:アマチュアオーケストラで演奏をご一緒すると、とかく中低弦(ビオラ、チェロ、コントラバス)の人数が少ないことが多くてちょっと寂しい思いをすることがありますけれど、鎌響はプロオケのフル編成並みの人数が練習でも毎回揃っていてすごいと思いました。出てくる音の厚みがしっかりあるのは共演していてとても充実感があります。

五味:鎌響はアマチュアオーケストラとしては稀有な伝統を守れており、毎回の演奏会でエキストラ(賛助出演)の奏者を呼ぶ必要がほとんどないのです。アマオケ業界ではエキストラに呼ばれて出ることでその団体の実力や特長がわかっていくのですが、その意味では周りのアマチュア演奏家にとっては謎のヴェールに包まれた団体となっています。(笑)

【プロアマでオーケストラに相違全くなし】

五味:湯川先生はすでに2023年にNHK交響楽団の定期の指揮をされたキャリアをお持ちですが、一流のプロオケを指揮されるときと、鎌響のようなアマチュアに来演するときではアプローチは変わるのですか?

湯川:例えば野球選手とかサッカー選手って言ったら、プロとアマではフィールドも違えば道具もプロはプロのものを使っていますよね。でも、オーケストラを指揮する時は全く同じスコアを使います。奏者の皆さんが使っているパート譜も同じものです。楽譜を読んで、どんな音楽なのか想像し再現していく工程は全く同じなわけで、感覚的に大きな差は感じていないです。

長谷川:私も違わないと思いますね。ちょっと演奏や音楽のことからはそれてしまうんですけど、さきほど、鎌響の団員のみなさんと一緒にお食事をしていて、一緒にお話させていただいたのですが、、「あの何年前のあの指揮者とのあの曲は大変だった」とか「あー、それが私が初めて乗った(出演した)演奏会」とか思い出や感想を言い合っていらっしゃいましたが、プロオケの同僚同士でも。全く同じ会話をしているのです。オーケストラプレイヤーはプロでもアマでも同じ話をするんだ、と思いました。

五味:お二人それぞれに、指揮者とチェリストを目指されたきっかけや理由を教えていただけますか?

湯川:進路を本格的に考え始めて高2の終わりの頃、幼い頃住んでいた東北地方が東日本大震災に見舞われました。私自身が被災をしたわけではありませんでしたが、大きなショックを受けました。その中で、自分自身が音楽に救われたように感じて、音楽家を志すようになりました。

長谷川:私のほうは、実は自分でチェリストになろう、と思うよりずっと前、3歳のときからから習い事としてチェロを始め、そのままずっと続けて今になっています。
プロのチェリストになろうと思ったのはやっぱり高校3年生の時ですね。進路を考えているころにプロの方とチェロアンサブルをする機会があって、そのプロの方の演奏を聴いてすごく感動して、それがきっかけで、プロの道を目指したい、という気持ちになりました。

【一人称で語るメルヘンの世界】

五味:鎌響では春の定期演奏会では比較的聴衆のみなさまに親しみが深い、いわゆる名曲をとりあげる方針でプログラムを組んでいます。
湯川先生は今回のメインプログラム「シェエラザード」は音楽づくりのこだわりとかはどうお考えですか?

湯川:物語がある曲ですよね。その曲で奏でられる音色から物語の情景が見えるような音を作れたらいいなっていう気持ちでこの曲に取り組んでいます。
色々な人生のバックグラウンドをお持ちのみなさんが一緒に音楽を演奏する中で、それぞれがお持ちのイメージを共有して深みのある音楽表現を作れたらいいな、と思っています。やはりみなさん豊富な人生経験をお持ちですから!!

五味:N響の定期演奏会ではフェドセーエフの代役で指揮台にお立ちになりました。フェドセーエフを始め、巨匠たちが情熱的な熱演を聴かせてきた歴史のあるこの曲ですが、湯川のシェエラザードはこうです、という推しポイントはありますか?

湯川:力強さや活気、メルヘンさ、異国情緒あふれるオリエンタルな雰囲気さなど、この作品が持つ多様な色合いを出していければ、そしてそれを物語を語っているシェエラザード姫のようにお客様にも語りかけるようにお聴かせできればと思っています。

【オーケストラと共にスケールの大きさを伝える】

五味:中プロのドヴォコン(ドヴォルザークのチェロ協奏曲の俗和称)もチェロの協奏曲ならこれ、という超有名曲です。長谷川先生はドヴォコンはいままで何回弾かれてますか?

長谷川:えっと、一回ごとを思い出すのがとっても大変で、3回かな。3回弾いてます。

五味:今回が4度目ということですね。この曲に込める思いみたいなものはおありですか?

長谷川:やっぱりチェリストはもう全員弾く曲で、すごく大作ですし、お客様みんなが大好きな曲、一番聴きたいと思うような作品です。アメリカに住んでいたドヴォルザークの望郷の念をとても感じますし、そこからくる哀愁ある旋律に聴く人は心惹かれるのだと思いますが、同時にチェコの美しい風景も見えてくる作品です。
今回の鎌響ではいつもより大きな編成でのオーケストラとの共演でもありますので、オーケストラの皆さんと一緒にスケールの大きな作品をいっしょに作るつもりで、そして美しい情景が見えてくるような演奏を目指したいです。

五味:長谷川先生はものすごく多忙なスケジュールで演奏活動をされていますが、そんななかでつぎつぎと大曲、難曲に挑まれるにあたって、コンディション作りに気をつけていることはありますか?

長谷川:まずはよく寝ること、寝るのは大事。そしてしっかり食べることですね。
あとは、多忙で時間の余裕がなくなってきてから身に着けてきた習慣ですが、若くて時間があったころのように1曲の練習に何時間もかけられないので、ちょっとずつでも少しでも早め早めに次の演奏の準備をしていくようにしています。

【芳醇な響きの鎌倉芸術館でライブの刺激を】

五味:最後にお二人からひとことずつ、定期演奏会へのご来場をご検討されているお客様へメッセージをお願いします。

湯川:実際に見たり聞いたりする中で、「これは好きだなぁ」と思うものも「今回はうーん」と思うものもあると思うのですが、そういう感覚はライブで見ないとわからない肌感というか、空気感なんだと思います。YouTubeで見てもたぶんその感覚は得られないものです。演奏は一期一会、その日にしか聞くことのできないものです。ライブだからこそ感じられる空気感を楽しみにいらしていただけると嬉しいと思います。

長谷川:私は先日鎌倉芸術館で初めて弾いたんですね。すばらしい響きのホールで、鎌響を聴きにこられるお客様たちはこんなにいいホールでいつも音を聞いているのだ、そして私は今度ここでソロを弾かせてもらえるのか、と思うととてもわくわくしました。
私自身も、あの名曲をこの素晴らしいホールですばらしい鎌響の仲間たちと演奏できるのはとても楽しみにしています。みなさんもどうぞお越しください。

(2026年2月28日 大学セミナーハウス)

ドヴォルザークのチェロ協奏曲の熱のこもったリハーサル